海上自衛隊が取り組む無人化と自律化 UUVとUSVの開発はどうなっているのかイマドキのフナデジ!(3)(1/3 ページ)

「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第3回は、海上自衛隊が開発に取り組むUUV(無人潜航艇)とUSV(無人艇)の関連技術を取り上げる。

» 2025年06月05日 06時00分 公開
[長浜和也MONOist]

 本連載の第1回で海上保安庁の大型測量船に関連してAUV(自律型無人潜水機)の活用事例を紹介した。

 「海上保安庁をやるなら海上自衛隊は?」ということで、今回は報道などでも見聞きする機会が増えているUUV(無人潜航艇)とUSV(無人艇)の海上自衛隊における関連技術の開発状況を紹介する。

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ウクライナ軍の対ロシア戦術で明示されたUUVとUSVの有効性

 現在、UUVとUSVが防衛関連で国際的に注目される背景には、ロシアによるウクライナ侵攻における戦術運用の成功が大きく関与している。

 ロシアのウクライナ侵攻による海域での軍事衝突では、UUVやUSVが現代戦において不可欠な存在であることを明示した。特に、ウクライナ軍はUUVやUSVを活用し、従来の兵器体系に比べて柔軟性とコスト効率の高い戦術を実現している。

 例えば、2024年12月31日、ウクライナの特殊部隊「グループ13」は、MAGURA V5 USVに搭載されたR-73ミサイルを用いて、クリミア沖でロシアのMi-8ヘリコプターを撃墜した。さらに、2025年5月2日には、MAGURA V7 USVがAIM-9ミサイルを使用し、ロシアのSu-30戦闘機2機を撃墜するという世界初の事例が報告されている。また、ウクライナはMarichkaと呼ばれるUUVを開発し、敵の艦船やインフラへの攻撃に活用している。これらは、戦場の様相を一変させ、軍事技術の進化を象徴する事例といえる。

 研究開発段階のみと思われがちだったUUVとUSVが、既存の兵器と連携して特定の任務においては代替し得るものとして再評価されており、世界各国で導入や開発が加速している。これらは既に補助装備ではなく、戦術単位で機能する独立システムとしての地位を確立しつつある。

 このようなインパクトは、第一次世界大戦における戦車や潜水艦、第二次世界大戦の空母、エイラート事件やフォークランド紛争における対艦ミサイルといった、戦場の常識を転換した兵器の登場と類似する点が多い。戦術だけでなく、装備調達や部隊編成の在り方にまで影響を及ぼすUUVとUSVは、いまや単なる支援装備ではなく、軍事技術の主流となりつつある。

防衛省による自律行動可能移動体=無人アセットの陸海空における運用構想 防衛省による自律行動可能移動体=無人アセットの陸海空における運用構想。海洋無人アセットのUUVとUSVは海洋監視用デバイスとして位置付けられている[クリックで拡大] 出所:防衛省
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